2004年10月19日

光が描く写真

現在「逃げさるイメージ」(アンリ・カルティエ・ブレッソン/楠本亜紀|スカイドア)を再読。以前は斜め読みしてたので、8月死去したこともあり、もう一度目を通そうと芸センより借りてくる。その中で、目についた文章を抜粋。自身のための言葉のアーカイブとこのサイトに訪れる人々に添えて。
雰囲気とは、このように、肉体についてまわる光り輝く影なのだ。
そしてもし写真がそうした雰囲気を示すのに成功しなければ、肉体は影を失うことになり、「影のない女」の神話のように、いったん影が切り捨てられると、あとにはもはや不毛の肉体しか残らない。写真家が生命を与えるのは、雰囲気というこの微妙なへその緒を通してなのである。

(ロラン・バルド「明るい部屋」より)


「影のない女」詳細

歌劇『影のない女』(全3幕・上演時間:約3時間30分)

作 曲: リヒャルト・シュトラウス 
台 本: フーゴー・フォン・ホフマンスタール(ドイツ語)
初 演: 1919年・ウィーン・国立歌劇場
登場人物: 皇帝(T)/皇后(S)/乳母(S)/バラク(Br)/バラクの妻(S)/霊界の使者(Br)/神殿の門番(S)/若者の幻影(T)

あらすじ

 架空の時代、遥かに遠い島国でのおはなし。

 霊界の王カイコバートの娘は、ある日、白いカモシカに姿を変えて遊んでいた。そのとき、狩りに来ていた皇帝の鷹に追われ、捕らえられてしまう。と、皇帝の目の前には、美しい女性の姿・・・二人は愛し合うようになり、結婚し、やがて1年が経とうとしている。しかし、人間でない皇后には影がない。影がないために子供を産むことができない。娘を人間に奪われたくない父王カイコバートは、毎月使者を送っては、娘に影のないことを確認していた。今月もまた、皇后には影がない・・・霊界の女と結婚した人間は、1年以内に子供ができないと石になってしまう。そうすれば、カイコバートは愛する娘を取り戻せるのだった。

 夜、皇帝の庭園。あと3日でまる1年が過ぎる・・・皇帝夫妻の部屋の前に控えている乳母のもとに、カイコバートからの12回目の使者がやってきた。乳母は、皇后には影がないことを報告する。乳母もまた、カイコバートが娘を取り戻すその日が待ち遠しい。彼女も霊界の女なのだ。皇帝が現れて、この3日ほど姿を消している鷹を探しに出かけるという。残された皇后は、一人、皇帝と初めて会った頃を思い出している・・・と、どこからか鷹が飛んできた。鷹は言う、「皇后には影がない。皇帝は石になる。」と。そのことを初めて知った皇后は驚き、乳母に確かめる。「影を得るにはどうすればいいのですか?」 影を得る方法を知っている乳母は、なかなかそのことを教えようとはしないが、皇后の決意は固く、とうとう二人して人間界へと下りてゆくことになった。

 皇后と乳母は、人間界に降り立ち、みすぼらしい家に住んでいる染物師バラクを尋ねる。バラクの妻は、もう子供なんかほしくないと思っているので、簡単に影を売ってもらえるだろうと思ったのだった。果たして、そのとおり、バラクの妻は、深く考えることもせず、影を売ることに同意する・・・皇后と乳母の二人が3日間女中として仕えるのと引き換えに。乳母は魔法で料理をし、バラク夫妻のベッドを二つに引き裂いてしまう。料理された魚は、なべの中で生まれなかった子供の歌を悲しく歌うが、戻ってきたバラクは文句も言わずに自分のベッドに一人ではいるのだった。翌朝、バラクが出かけてしまうと、乳母はバラクの妻に若い男の幻を見せて、彼女の心がバラクから離れるように細工する。バラクは、妻のためにとご馳走を持って帰ってくるが、兄弟や子供たちが先に群がってくるので、妻は不機嫌になって食べようともしない。バラクは仕方なく、ご馳走を彼らに与えてしまう。

 鷹を探しに行った皇帝は、見つけた鷹と共に帰ってきていた。が、彼が留守の間、家にいるといっていた皇后の姿が見えないので不審に思っていると、乳母と皇后が外から帰ってくるのが見えた。嘘をついた皇后を、皇帝は殺さなければならない。だが、最愛の人を、どうして手にかけることができるだろう?

 バラクの家では、乳母が、再びバラクの妻に若者の幻を見せていた。しかし、彼女は心を激しく揺らしながらも、いざというときになると、決心がつきかねて、眠っているバラクを起こしてしまう。家に戻っていた皇后は、夢に悲しそうなバラクを見て、人間の女から影を奪うことに、良心の呵責を感じている・・・が、このままでは、愛する皇帝は石になってしまうのだ・・・! 皇后は叫ぶ、「いっそ、私が、石になってしまいたい!」と。

 そして3日目がやってきた。真っ黒な雲が立ち込めてきて、雷鳴が轟くなか、バラクの妻は、不貞をはたらいたこと、もう子供は産まないので影を売ってしまったことを、夫に告白する。驚いたバラクが妻を見ると、確かに彼女には影がない! 乳母は皇后を促す。しかし、皇后は、バラクの妻から影を奪う気が失せている・・・怒ったバラクは妻を殺そうとするが、そのとき妻が、不貞をはたらいたという告白は嘘だったと告げると、突然地が真っ二つに裂けて、二人を呑み込むのだった。地下の世界で、二人は壁を隔ててばらばらに座っている。深く後悔した妻が夫に詫びると、バラクも優しく彼女を許すので、二人とも上へ戻ることを許される。

 眠っている皇后と乳母を乗せた舟が、霊界の入口にある川を流れてくる。目覚めた皇后は乳母が止めるのも聞かずに、皇帝の助命をカイコバートに頼みにゆく。霊界の神殿の中で、皇后は、バラク夫妻の愛を見て影を奪うことができなかったと言い、どうしても人間の世界に住みたいのだと訴える。カイコバートは、そこに噴出した黄金の泉を指し、この水を飲めば影を得られるという・・・しかし、その代わりに、バラクの妻は影を失ってしまうのだ、と。そこには石になってしまった皇帝の姿も見えるが、皇后はその水を飲むことができない・・・そのとき、皇后に影が・・・石になっていた皇帝も息を吹き返す。金色の滝が流れている美しい霊界の庭園で、バラクとその妻も出会い、皇帝夫妻とともに、愛の喜びを歌う。

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